この記事のポイント
- 30年固定の住宅ローン金利が 7.28% に上昇。2023年11月以来の高水準です
- 金利が上がると「買えない人」が賃貸に回り、家賃は上がりやすくなります
- ボストンに赴任・留学される方にとって大切なのは、金利を当てることではなく**「滞在期間」で住まいの形を決めること**です
1. ニュース:住宅ローン金利が約3年ぶりの高さに
2026年10月1日(米国時間)、米住宅金融大手Freddie Macが発表した30年固定金利の全米平均は 7.28% でした(AP通信報道)。前週の7.03%から一気に上がり、これは数年で最大の上げ幅です。6週連続の上昇で、1年前の6.34%、今年2月の底(5.98%)と比べても大きく上がっています。
背景にあるのは、中東情勢を受けた原油高とインフレ懸念です。住宅ローン金利は、FRB(米連邦準備制度理事会)の政策金利ではなく、10年国債の利回りに連動して動きます。その10年国債利回りが2月末の3.97%から、10月1日には5.27%まで上がりました。
市場にもすでに影響が出ています。8月の中古住宅販売は年率398万戸にとどまり、ローン申込件数は4週連続で減少しました。変動金利型(ARM)を選ぶ人が、申込の1割を超えています。

毎月の支払いはどれくらい変わる?
$400,000を30年固定で借りた場合の、毎月の元利返済額(税金・保険・HOAは含まない筆者の試算)です。
| 金利 | 時期の目安 | 毎月の返済額 | 2月の底(5.98%)との差 |
|---|---|---|---|
| 5.98% | 2026年2月(今年の底) | 約$2,393 | — |
| 6.34% | 1年前 | 約$2,486 | +約$93 |
| 7.03% | 先週 | 約$2,669 | +約$276 |
| 7.28% | 今週 | 約$2,737 | +約$344 |
同じ家でも、金利が1ポイント上がるだけで、毎月の返済が数百ドル変わります。
2. 「鼬ごっこ」の正体:金利・購入・賃貸のぐるぐる回る関係
ボストンで20年以上この市場を見てきて感じるのは、同じことが形を変えて繰り返されているということです。流れを整理するとこうなります。
| ステップ | 何が起きるか |
|---|---|
| ① 金利が上がる | 毎月の返済が増え、購入をあきらめる・先送りする人が増える |
| ② 購入者が減る | 取引が減り、価格は高止まりか、やや軟化する |
| ③ 賃貸に人が流れる | 買えない人が借りる側に回り、賃貸需要が増える |
| ④ 家賃が上がる | 空室が減り、更新時に値上げされやすくなる |
| ⑤ インフレが落ち着く | FRBが利下げしやすくなり、長期金利も下がりやすくなる |
| ⑥ 金利が下がる | 購入に戻る人が増え、賃貸需要がやわらいで家賃が安定していく |
| → ①に戻る | 購入者が増えすぎると価格が上がり、また金利上昇の影響を受ける |
ボストンの家賃がなぜここまで高くなったのかについては、こちらの記事でデータをもとに詳しく解説しています。 👉 【2026年最新】ボストンの家賃はなぜ「高すぎる」のか?データで見る実態と会社への交渉術
💡 豆知識①:なぜ金利が上がっても価格は大きく下がらないの? 低い金利で住宅ローンを組んだ持ち主は、売ると今の高い金利で買い替えることになるため、売りに出さない傾向があります(ロックイン効果)。市場に出る物件が少ないままなので、買い手が減っても価格が崩れにくいのです。
💡 豆知識②:金利が下がればすぐ住宅ローン金利も下がる? 必ずしもそうではありません。住宅ローン金利は10年国債の利回りに連動します。今回のように原油高などで長期金利が上がっている局面では、FRBが政策金利を下げても、住宅ローン金利がすぐには下がらないことがあります。
💡 豆知識③:家賃は金利だけで決まらない 家賃は、新しく供給される賃貸住宅の数、雇用、賃金にも大きく左右されます。金利上昇は家賃を押し上げる要因の一つですが、すべてを説明するわけではありません。 また、大型のアパートでは、金利などの経済指標、地域の空室率、その物件の契約状況をもとに、専用ソフトウェアが家賃を自動で決めています。経済ニュースが、時間差で家賃に反映される仕組みになっているのです。
3. 赴任・留学の方にとって、この金利ニュースは何を意味するか
結論から言うと、「購入のタイミングを心配する」よりも「賃貸の更新と予算を見直す」ほうが、はるかに現実的な影響があります。
3-1. 立場別に見る、金利上昇の影響と基本スタンス
| 駐在員(3〜5年) | 駐在員(滞在が延びそう) | 留学生・研究者(1〜3年) | |
|---|---|---|---|
| 住まいの基本 | 賃貸(会社の住宅手当・社宅) | まずは賃貸、延長が確定したら検討 | 賃貸(シェアも選択肢) |
| 金利上昇の直接的な影響 | 小さい(購入予定がなければ) | 購入を考えるなら大きい | ほぼなし |
| 間接的な影響 | 家賃上昇で住宅手当の上限に近づく可能性 | 同左 | 家賃上昇で生活費が膨らむ |
| やるべきこと | 住宅手当の上限と更新条件の確認 | 5年ルールで購入の損益を試算 | 予算のドル建て管理と更新時期の把握 |
3-2. 「購入は難しい」と言われる、赴任者ならではの理由
金利の高さとは別に、赴任・留学の方が購入を考えるときには、次のハードルがあります。一般論ですので、実際の条件は金融機関や状況によって異なります。
- 滞在期間が短い:購入時に2〜3%、売却時に売値の5〜6%ほどの諸費用がかかるのが一般的な目安です。数年の滞在では、物件価格の値上がりだけでは取り戻しにくくなります。
- 米国のクレジットヒストリーがない:渡米直後はローンの審査で不利になりやすく、頭金を多め(2〜3割以上)に求められたり、金利が上乗せされたりする場合があります。取り扱いのある金融機関も限られます。
- 為替の影響:円換算の負担感は、ドル建ての金利よりもさらに大きく感じられます。円安のときは特にそうです。
- 売却時の税務:帰国後に米国の物件を売る場合、税の扱いは居住者の判定などで変わります。検討する場合は、必ず税理士にご相談ください。
💡 豆知識④:ビザの種類にかかわらず、購入そのものはできます 「駐在や留学のビザでは家を買えない」という誤解を耳にしますが、米国では非居住者や外国人でも不動産を購入できます。問題は「買えるかどうか」ではなく、「滞在期間と費用のバランスが合うか」「ローンを組めるか」です。
4. 家賃が上がりやすい局面での「賃貸の守り方」5ステップ
金利が高い時期は、賃貸市場でも次の5点を意識しておくと安心です。
- 「更新時の家賃は事前には分からない」と知っておく 固定期間のリースの間は、原則として家賃は変わりません。値上がりは更新時に起こります。ただし、Aクラスのアパートのほとんど、Bクラスでも多くの物件では、専用のソフトウェアが家賃を決めています。更新時の家賃も同じで、その時点の金利などの経済指標、地域の空室率、その物件の契約状況をもとに算出されます。そのため、契約前にリースオフィスの担当者に「更新のときは何%上がりますか」と聞いても、担当者自身が把握していません。 事前に確認できるのは金額ではなく、更新オファーがいつ届くかと更新・退去の意思表示の期限です。Aクラスでは、オファーは満了の約90日前、意思表示の期限は60日前が一般的です。値上げ額に驚いても、届いてから期限まで約1か月の猶予があります。「提示額は絶対ではない」ことを前提に、次の対応を考えましょう。👉【ボストン賃貸】更新時の大幅値上げにそのままサインはNG!? プロが教える「家賃交渉」の裏ワザと落とし穴
- 会社の住宅手当の上限と、実際の家賃を比べる 更新で家賃が上がっても手当の上限は変わらないケースがあります。上限に余裕を持たせた物件選びが安心です。
- 更新オファーが届いても、すぐにサインしない 新規入居のときと違い、更新では「滞納がない」「トラブルがない」という実績が、正当な交渉材料になります。主なポイントは次の3つです。
- 自分と同じ間取りの現在の募集家賃を公式サイトで確認し、画面を保存して根拠にする
- 基本家賃が下がらない場合は、駐車場代の一時免除やPet Rentの免除など、**コンセッション(譲歩)**を打診する
- 退去通知を出した後でも、期限が近づいて次の入居者が決まっていなければ、再交渉できる場合がある
- 入居時にかかる費用を把握する マサチューセッツ州では、入居時に請求できるのは、①初月分の家賃、②最終月分の家賃、③セキュリティデポジット(家賃1か月分まで)、④鍵代(Lock/Key fee)の4項目に限られます。
- 「どの立場で仲介を使うか」を確認する 2025年のブローカー手数料制度の改正により、仲介手数料は「その仲介会社に依頼した側」が負担する考え方になりました。借り手が自分のエージェントに依頼した場合は、借り手側の負担になる可能性があります。依頼前に、費用の有無と金額を必ず確認してください。
💡 豆知識⑤:マサチューセッツ州に家賃統制(Rent Control)はありません 州内では1990年代から家賃統制が禁止されています。更新時の値上げ幅に法的な上限はなく、大家との交渉が重要になります。契約の途中(固定期間中)に家賃を一方的に上げることは、原則できません。
5. 「そろそろ購入を考えたい」ときの判断基準
滞在が延びそう、あるいは永住も視野に入ってきた、という方は、次の3つを順番に確認してみてください。
| チェック項目 | 目安 |
|---|---|
| ① 滞在予定年数 | 5年未満なら賃貸が合理的なケースが多い(諸費用を回収しにくいため) |
| ② 自己資金(頭金+諸費用) | 頭金に加えて、購入時と売却時の諸費用、修繕や急な出費の余力があるか |
| ③ 毎月の総支払額 | ローン返済に、固定資産税・保険・HOA(管理費)を足して、今の家賃と比べて無理がないか |
6. プロのまとめ:金利を当てようとしない
🏠 プロのまとめ
住宅ローン金利は、ニュースのたびに動きます。「もう少し待てば下がるのでは」と思う方も多いのですが、プロでも底や天井を当てることはできません。
赴任・留学の方にとって、住まいの判断は「金利」ではなく「滞在期間」が軸になります。
- 滞在が5年未満 → 賃貸を軸に、更新時の値上げに備える
- 滞在が延びそう → 賃貸のまま、購入の損益を試算してみる
- 永住も視野 → 金利が下がったときに動けるよう、資金計画と信用履歴を整えておく
金利と家賃の鼬ごっこは、これからも続きます。大切なのは、その動きに振り回されず、自分の滞在計画に合った住まいを選ぶことです。
出典・参考
- AP通信(ABC Newsに掲載)「Average long-term US mortgage rate churns upward to its highest level in nearly 3 years at 7.28%」2026年10月1日
- 毎月の返済額は、元利均等・30年固定・借入額$400,000で筆者が試算したものです。固定資産税、保険、HOA、PMIは含みません
ボストン周辺でのお部屋探しや、賃貸と購入のご相談は、Massachusetts Healthy Livingで日本語にて承っています。

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