投票日:2026年11月3日(火)
※この記事は、各Questionの内容を中立的に整理したものです。特定のQuestionへの賛否をお勧めするものではありません。最終的な内容は、州務長官が発行する公式ガイド「Information for Voters」でご確認ください。
この記事を書いた理由
このブログは、ボストン周辺での住まい探しと暮らしの情報をお届けする場所です。選挙は、その趣旨から少し離れた話題に見えるかもしれません。
それでも今回あえて取り上げたのは、アメリカの社会の仕組みを知ることが、この国で暮らすうえで決して遠回りではないと考えているからです。
家賃のルール、固定資産税、学校のこと、どんな家をどこに建てられるのか。暮らしの土台になる取り決めの少なくない部分が、この土地に住む人たちの投票によって形づくられています。仕組みを知っておけば、ニュースの見え方が変わり、住んでいる街への理解もぐっと深まります。
投票できる・できないにかかわらず、「この国の人たちは、こうやって物事を決めているのか」と知っておくことは、きっとこの先の暮らしの役に立ちます。
はじめに:日本では、住民が直接「決める」場面は多くない
日本は基本的に間接民主制です。国会議員や首長、地方議員を選挙で選び、その人たちが法律や条例を決める。住民投票が行われるのは、よほどのことがあるときに限られる、というのが多くの方の実感ではないでしょうか。
アメリカでも、今回の中間選挙の中心は、もちろん代議士(政治家)を選ぶ間接民主制の選挙です。ところが、こちらの選挙では必ずと言ってよいほど、**住民が政治や行政に対して直接意思表示をする「Question」**が同じ投票用紙に載っています。
今回のマサチューセッツ州は、なんと9つ。報道によれば、これは過去30年あまりで最多で、1994年に並ぶ「記録タイ」の数です。
この記事では、日本から来られた方・これから来られる方に向けて、
- 「Question」とは何か
- 今回の9つは何を問うているのか
- 日本との違いと、暮らしとの関わり
を、やさしく整理します。
1. 「Question」とは何か:2種類あります
マサチューセッツ州では、州憲法の修正条項(Article 48)に基づく仕組みで、住民が署名を集めて法律案を投票にかけることができます。今回の9つは、次の2種類に分かれます。
| 種類 | 対象 | 内容 | 該当するQuestion |
|---|---|---|---|
| Initiative Petition(住民発議) | 新しい法律案 | 住民が署名を集めて提案。可決されれば法律になる | Question 1〜8 |
| Referendum(住民投票による審査) | すでにある法律 | 成立済みの法律を残すか、廃止するかを問う | Question 9 |
💡 豆知識:Question 9だけは「Yes」の意味が逆に見えます Question 1〜8は「新しい法律に賛成か」を問うので、Yes=新しい法律ができる、です。一方、Question 9は「今ある法律に賛成か」を問うので、Yes=今の法律を残す、No=廃止するとなります。投票用紙の前に、それぞれの「Yesを選ぶと何が起きるか」を必ず確認しておきたいところです。
また、州から全世帯に配られる公式の小冊子(通称Red Book)には、各Questionについて次の情報が載っています。
- 司法長官が書いた法案の要約
- Yes/Noを選んだ場合の効果の説明
- 州の財務への影響の見通し
- 賛成側・反対側それぞれの主張(各150語以内)
2. 9つのQuestionを一覧で見る
| # | テーマ | Yesの場合 | Noの場合 |
|---|---|---|---|
| 1 | 公文書公開法の拡大 | 州議会と知事室の記録も、原則として公文書公開法の対象になる | 現状のまま |
| 2 | 公設弁護人の労働組合 | CPCS(州の公設弁護人機関)の職員が労働組合を結成できる | 現状のまま |
| 3 | 予備選挙の変更 | 政党ごとの予備選をやめ、全候補者が1枚の投票用紙に載る単一の予備選にする(上位2名が本選へ) | 現状のまま |
| 4 | 当日の有権者登録 | 投票日当日に、投票所で有権者登録・住所変更ができる | 現状のまま(選挙の10日前までに登録) |
| 5 | 州の歳入上限と払い戻し | 州の徴収額に年間の上限を設け、超えた分は翌年に納税者へ払い戻す | 現状のまま |
| 6 | 自然資源保全基金 | スポーツ用品・RV・ゴルフ場などに関わる売上税収を、自然資源保全のための基金に充てる | 基金は作られない |
| 7 | 戸建て住宅と土地利用 | 5,000平方フィート以上の区画なら、州内どこでも戸建て住宅を建てられるようにする | 現状のまま |
| 8 | 嗜好用マリファナ | 2016年に成立した嗜好用マリファナの合法化法を廃止する(所持に対する罰則も変更) | 現状のまま |
| 9 | 2024年の銃関連法 | Yes=今の法律を残す | No=法律を廃止する |
3. それぞれのQuestionのポイント
ここでは、報道や公式ガイドで紹介されている賛成側・反対側の主な主張を並べます。どちらが正しいかは、この記事では判断しません。
🏛️ 政治の仕組みに関わるもの(Question 1・3・4)
Question 1:州議会と知事室も公文書公開法の対象に
- 賛成側の主張:州内の市町村や州の各機関は公文書公開法に従っているのに、州議会と知事室は対象外になっている。税金の使い道を住民が確認できるようにすべき。提案者は州会計監査官のDiana DiZoglio氏です。
- 反対側の主張:組織的な反対運動は報じられていませんが、州議会の委員会の多数派は、免除規定が狭すぎて住民のプライバシーや議員の自由な議論に影響しうること、また三権分立の観点で憲法上の問題があることを指摘しています。
- ポイント:州の財務への影響は「目立った影響なし」と公式に見積もられています。施行は2027年1月1日の予定です。
Question 3:政党ごとの予備選をやめる
- 賛成側の主張:州内は競争のある選挙が少なく、選択肢がないと有権者が軽く扱われてしまう。誰でも意味のある1票を持てるようにすべき(Harvard大学のDanielle Allen教授ら)。
- 反対側の主張:本選での選択肢が狭まり、資金力のある候補者に有利になる(州民主党のSteve Kerrigan委員長ら)。
Question 4:投票日当日の有権者登録
- 賛成側の主張:他の17州が認めている仕組みで、ニューイングランドの近隣州と同じ機会を与えるもの。
- 反対側の主張:不正への懸念がある。
- ポイント:現在は選挙の10日前までに登録する必要があります。
⚖️ 労働・税・自然に関わるもの(Question 2・5・6)
Question 2:公設弁護人の労働組合
- 賛成側:本人たちが望むなら、組合を作る権利があるはず。
- 反対側:人員配置や裁判所からの要請への対応に支障が出かねない。
Question 5:州の歳入上限と払い戻し
- 賛成側:家計に、より多くのお金が戻る。
- 反対側:「Rainy Day(予備費)」基金が減り、大幅な予算削減につながりかねない。
Question 6:自然資源保全基金
- 賛成側:数千万ドル規模の資金で、飲料水の保全、洪水被害の防止、公園や遊歩道などの整備ができる。
- 反対側:ほかの優先事項の予算が減る可能性がある。最終的な予算の決定権は州議会にある。
🏠 住まいに直結するもの(Question 7)
Question 7:5,000平方フィート以上の区画に戸建てを
- 賛成側:共働きでも家が買えないという声に応え、より手の届く価格の「スターターホーム」を増やせる(提案グループ「Legalize Starter Homes」)。
- 反対側:全州一律の仕組みで、タウンごとの土地利用規制(ゾーニング)の自治権が失われる。水道などのインフラが追いつくのか心配するタウンもある(Massachusetts Municipal Association)。
💡 豆知識:ゾーニングはなぜタウンごとに違う? マサチューセッツ州では、「どんな建物を、どの区画に建てられるか」というゾーニングのルールは、基本的にタウン(市町村)ごとに決められています。Question 7は、それを州の法律で一部変えようとする提案です。住まい選びに関わる話題なので、お住まいの地域(または検討中の地域)にどう関わりうるのか、公式ガイドの要約と州の財務見通しも合わせて確認しておくと、ニュースの見え方が変わります。
🚬🔫 暮らしの規制に関わるもの(Question 8・9)
Question 8:嗜好用マリファナの合法化を廃止
- 賛成側(廃止したい側):自動車事故、犯罪、生産性の低下につながると主張。
- 反対側:大麻産業の雇用が失われる。違法化により、特定の層に偏った逮捕が増えかねない。
Question 9:2024年の銃関連法を残すか、廃止するか
- 内容:ゴーストガン(製造番号のない自作銃)、機関銃(への改造)、アサルト型の銃器への規制強化、「レッドフラッグ」(危険と判断される人から銃を一時的に取り上げる仕組み)の拡充、電子的な登録システムの義務化などを含みます。
- Yes(残す)側の主張:地域を銃による暴力から守るために、重要な法律を維持すべき。
- No(廃止)側の主張:マサチューセッツはすでに全米で最も厳しい銃規制を持っていて、憲法上の権利を制限するものだ。
4. 日本にも「直接参加」の仕組みはあります
「日本は住民投票がほとんどない」という印象は、大筋では合っています。ただ、制度がまったくないわけではありません。
| 仕組み | 内容 | 特徴 |
|---|---|---|
| 憲法改正の国民投票 | 憲法改正には国民投票が必要 | 制度としてはあるが、実施されたことはまだない |
| 最高裁判所裁判官の国民審査 | 衆議院選挙のときに、最高裁判事を審査する | 実際に毎回行われている |
| 地方自治法の直接請求 | 条例の制定・改廃の請求、議会の解散請求、首長のリコールなど | 署名を集めて請求する仕組み |
| 各地の住民投票 | 条例に基づく住民投票(沖縄県民投票、大阪の「都構想」住民投票など) | 個別のテーマごとに実施。結果が法的に拘束するかは制度による |
アメリカ(マサチューセッツ州)との大きな違いは、住民自身が「法律案」を作って署名を集め、投票で成立させることができる点です。しかも選挙のたびに複数のテーマが並び、有権者は政治家を選ぶのと同時に、具体的なテーマにも1つずつ意思表示します。
5. もっと身近な「Question」:タウンの固定資産税
州全体のQuestionだけでなく、タウン単位のQuestionもあります。不動産に関わる方にとって一番身近なのは、固定資産税に関わる**Proposition 2½(プロポジション・ツー・アンド・ハーフ)**でしょう。
- マサチューセッツ州では、タウンが集められる固定資産税の総額の伸びに、原則として**年2.5%**の上限があります。
- それを超えて税収を増やしたいときは、**タウンの住民投票(Override)**で承認を得る必要があります。
- 学校の増築や新設、消防署や図書館の建て替えなどが、Overrideの議題になることがよくあります。
つまり、住んでいるタウンの学校やサービスの水準、そして毎年の固定資産税は、「議員が決める」だけでなく「住民の投票で決まる」部分もあるということです。
プロのまとめ
- Question=住民が直接、法律の案に「Yes/No」を投じる仕組み。今回のマサチューセッツ州は、記録タイの9つです。
- Question 1〜8は新しい法律案、Question 9だけは今ある法律を残すかどうか。Yes/Noの意味に注意しましょう。
- 住まいに関わるのは、**Question 7(土地利用)、Question 5(州の歳入と払い戻し)、Question 6(自然資源保全)**などです。いずれも賛成・反対の両方に、もっともな理由があります。
- 日本とは仕組みが違うので、「政治家を選ぶ」だけでなく「決める」ことにも参加する感覚を、現地の生活の中で体験できます。
- 投票権の有無にかかわらず、住んでいる州やタウンで何が議論されているかを知っておくことは、暮らしや物件選びの背景を理解するうえで役に立ちます。
実際の投票の手続きや日程については、州の公式の案内で最新の情報をご確認ください。
参考にした情報
- Secretary of the Commonwealth of Massachusetts「Information for Voters 2026 Ballot Questions」(公式ガイド、Question 1の全文・各Questionの案内)
- CBS Boston「Massachusetts ballot question guide for the 2026 election」(2026年10月30日更新)
- WBUR「Here are all 9 of our Massachusetts ballot question explainers」(2026年10月19日)
- Boston University「Massachusetts Has a Record-Tying Nine Questions on the Ballot This Year」(2026年10月27日更新)
- CommonWealth Beacon「Massachusetts 2026 ballot questions, explained」
※日本の制度(第4節)は一般的な概要です。個別の制度の詳細は、総務省・各自治体等の公式情報をご確認ください。

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